1989年に公開されて以来、世代を超えて愛され続けているジブリ映画「魔女の宅急便」。主人公キキが箒で空を飛ぶ姿に憧れた方も多いのではないでしょうか。
この作品を観るたびに気になるのが、あの美しい街並みはどこの国をモデルにしているのか、そして印象的な「ニシンのパイ」とは一体どんな料理なのかということです。
今回は、これらの疑問について詳しく解説していきます。
魔女の宅急便の舞台となった国はどこ?
映画に登場する港町の風景は、まるで絵本の世界から飛び出してきたような美しさです。赤い屋根が連なる街並み、青い海、石畳の坂道。どれをとっても印象的な光景ばかりでした。
魔女の宅急便の舞台について、宮崎駿監督は「特定の街をモデルにしたわけではない」と語っています。しかし、制作スタッフが実際に取材で訪れた場所があります。それはスウェーデンのストックホルムやゴットランド島のヴィスビーです。北欧らしい落ち着いた雰囲気を持つこれらの街が、映画制作の参考になったことは間違いありません。
クロアチアのドゥブロヴニクとの関係
一方で、映画公開後にファンの間で「あの街に似ている」と話題になったのが、クロアチアのドゥブロヴニクです。
アドリア海に面したこの港町は「アドリア海の真珠」と呼ばれ、オレンジ色の屋根が連なる旧市街は世界遺産にも登録されています。空と海の境界線が近く、石畳の坂道が迷路のように広がる様子は、キキが飛び立つシーンを彷彿とさせます。
太陽の角度によって屋根の色合いが微妙に変わり、朝焼けや夕暮れ時には魔法がかかったような光景が広がるのも魅力です。実際にドゥブロヴニクを訪れた人の多くが「映画の世界に入り込んだよう」と感じるそうです。
城壁に囲まれた旧市街を歩けば、14世紀からの建物が今も現役で使われている様子を目にできます。パン屋の香り、洗濯物を干す路地、坂を駆け下りる子どもたち。どこを切り取っても、キキが笑っていそうな情景が広がっているのです。
ヨーロッパの複数の街が混ざり合った世界観
結局のところ、「魔女の宅急便」の舞台は一つの国や街ではなく、ヨーロッパの美しい港町の要素が組み合わさって生まれた架空の場所だと言えます。
スウェーデンの静けさ、クロアチアの明るさ、そして地中海沿岸の温かさ。これらが絶妙に混ざり合うことで、あの忘れられない街並みが誕生しました。だからこそ、世界中の人々が「自分の知っている街に似ている」と感じられるのかもしれません。
実際、フランスのコリウールやイタリアのチンクエテッレなど、他のヨーロッパの港町でも「魔女の宅急便みたい」という声が上がっています。海と坂道、そして人の温かさという共通点が、多くの街に存在しているからでしょう。
印象的な「ニシンのパイ」はどんな料理?
物語の中盤、キキが雨の中必死で届けたのが「ニシンのパイ」です。このシーンを覚えている方は多いでしょう。
心に残る配達シーン
優しい老婦人に依頼されて、おばあちゃんが焼いた「ニシンのパイ」を、魔法のホウキに乗って孫に届けに向かうキキ。途中で突然の雨に遭い、パイを濡らさないように必死で頑張る姿には心を打たれます。
しかし、せっかく届けたのに孫娘は冷たい態度で「私これキライなのよね」と言い放ちます。多くの視聴者がこのシーンで胸を痛めたことでしょう。
宮崎駿監督は、このシーンについて「あれは孫娘の正直な気持ちで、仕事をしていく上で世間ではよくあること」だと語っているのです。確かに、すべての配達で温かく迎えられるわけではないという現実を、さりげなく描いた名シーンだったのかもしれません。
ニシンのパイの正体とは
この料理は、イギリスでの正式名称を「Stargazy pie(スターゲイジー・パイ)」と言い、「星を見上げるパイ」という意味があります。ロマンチックな名前ですね。
本場イギリスの伝統的なニシンのパイは、ニシンの頭が外に飛び出した独特の見た目をしています。映画では美しく整えられた姿で描かれていましたが、実物を見ると孫娘が「キライ」と言った理由も分かる気がします。
パイ生地の中には、ニシンのほかにも玉ねぎやかぼちゃなどの野菜が入っています。これらの食材を組み合わせることで、魚の旨味と野菜の甘みがマッチした味わいになるのです。
実際の味はどうなのか
気になるのは、このニシンのパイが本当に美味しいのかという点です。
実際に作って食べた人の口コミを見ると、「まずい」という声よりも「意外と美味しい」という感想の方が多いようです。魚料理が好きかどうかで評価が分かれる傾向にありますが、多くの人が「一度は食べてみる価値がある」と感じています。
現在では、ジブリカフェなどで再現メニューとして提供されている店舗もあります。東京の高円寺にある「Baby King Kitchen」では、予約制でニシンのパイを楽しむことができるそうです。映画の世界を実際に味わってみたい方は、訪れてみるのも良いでしょう。
自宅で作ることもできる
ニシンのパイは家庭でも再現可能な料理です。本場のレシピでは生のニシンを使いますが、手に入りにくい場合はサバ缶で代用するレシピもあります。
パイシート、玉ねぎ、かぼちゃ、そして魚があれば基本的な材料は揃います。オーブンでじっくり焼き上げれば、映画の世界に一歩近づけるかもしれません。料理好きな方は、ぜひ挑戦してみてください。
作る際のポイントは、パイ生地をしっかり密閉すること。こうすることで、中の具材から出る水分と旨味を閉じ込めることができます。焼き上がりにはバターの香りが広がり、食欲をそそります。
まとめ
「魔女の宅急便」の舞台は、ヨーロッパの美しい港町の要素が組み合わさった架空の場所です。スウェーデンのヴィスビーやクロアチアのドゥブロヴニクなど、実在する街々からインスピレーションを得て生まれました。
印象的な「ニシンのパイ」は、イギリスの伝統料理がモデルになっています。見た目のインパクトは強いものの、実際に食べると意外と美味しいという声も多く聞かれます。
もし機会があれば、映画の雰囲気を感じられるヨーロッパの港町を訪れたり、ニシンのパイを味わってみたりするのも素敵な体験になるはずです。キキが見た景色と同じ空気を、あなたも感じてみませんか。映画を観返しながら、次の旅先を想像するのも楽しいものです。



