「千と千尋の神隠し」の千尋が働くことになった湯屋には、大根やヒヨコのような姿をした神様など、八百万の神様が疲れを癒しにやってきます。
その中でも、作中最も強烈な印象を残したのが『オクサレ様』。
強烈な見た目と裏腹にとっても大人気!
そんなオクサレ様の正体や『よきかな』の意味が気になります!
ということで、今回はオサクレ様の隠された正体に迫ります!
オサクレ様とはどんなキャラ?
千尋が湯屋で働き出してから少し経ったある雨の夜。
湯屋に繋がる橋の向こうから、オクサレ様はやってきます。
ちょっとしたトラックくらいありそうな巨体。
全身を覆うヘドロは絶えず垂れ流れ、時折紫色の粘着質な液体が溢れ出る異様な姿。
オクサレ様が歩いた道にはその分泌物の後がしっかり残るほどです。
そんなオクサレ様の最大の特徴が、体から発せられる強烈な臭いです。
その臭いには、これまで数多の神様たちを迎え入れ、『お客様は神様!』とばかりにニコニコと接してきた湯婆婆でさえ写真のような表情と強ばり様です。
あまりの臭いに、カエルの従業員はパタンと気絶し、リンが持ってきてくれたご飯は瞬く間に腐ってしまいました。
ご飯が腐る程の臭いって、想像できませんよね。
そういえばよく小学校の裏庭などにヘドロの溜まった池がありましたが、それの100倍くらい強烈な臭いと思って貰えたらちょうどいいのかもしれませんね笑
オクサレ様の名前に由来があるのか?
オクサレとは、どういう意味なのでしょうか。
実はオクサレ様、またの名を『腐れ神』と呼ばれています。
『腐れ』とは、くさること・くさっているものを指します。
稲荷神社などもよく『おいなりさん』と呼ばれていますよね。
同じような感じで愛着を持って、『オクサレ様』と呼ばれているのかもしれません。
つまりオクサレ様とは『腐っている神様』または『腐っているものの神様』と言えるでしょう。
また、オクサレ様とはどうやら1人の神様を指すものではないようです。
それは、このシーンでの会話で発覚します。
湯婆婆が従業員のカエルから、オクサレ様が来たことを伝えられるシーンのこと。
「腐れ神だって?」と聞く湯婆婆に対し、カエルは「それも特大のオクサレ様です」と返します。
つまり、特定の特徴を持つ神様たちのことをまとめて『オクサレ様』と呼んでいる様です。
今回のオクサレ様はその中でも大分大きいようなので、個体差があるんですね。
オクサレ様がヘドロ姿なのは意味があった
オクサレ様の正体は一体なんなのでしょうか。
オクサレ様は、別名『腐れ神』と呼ばれている通り、腐ったもの=穢れから生まれた神様だと考えられています。
そして、その『穢れ』とは自然的に発生したものではなく、他ならぬ我々人間が自然界に介入したことで発生した汚れやゴミ、環境汚染などを指していると噂されています。
どうやら、人間そのものや人間が生み出したゴミというのは、この世界では相当な『穢れ』な様です。
それを裏付ける様に、千尋が人間であることがバレた時も、周りの従業員はみんな千尋のことを汚いものを見るような目をしていました。
また、人間の匂いを「臭い」と言っていましたよね。
そのことから、人間という存在自体があの世界では異質で汚れたもの=『穢れ』と考えられます。
その人間が発生させた人工的なゴミや汚染から生まれたのが、オクサレ様なのです。
つまりオクサレ様とは、神様からも人間からも嫌われるとってもかわいそうな神様なんですね。
なぜこのような神様が登場したのか、そこには宮崎駿監督の意図が隠されているように思います。
例えばスタジオジブリの別作品『平成狸合戦ぽんぽこ』
この作品では、人間による環境破壊のせいでタヌキやキツネといった野生生物が被害を受けている様子が描かれています。
また『もののけ姫』でも、たたら場のために山の木々が伐採され、猩々(猿のような見た目の山に住む神様)が人間を憎む姿が描かれています。
したがって、オクサレ様という神様を登場させたことには、この2作品と同様に我々人間が自然に対してどんなに酷いことをしているのか、皮肉をこめたアピールなのかもしれません。
オクサレ様の正体は河の神(龍)
カエル達が「お帰りくださいませ」と叫ぶ中、オクサレ様は聞こえてないかのように足をとめず、とうとう湯屋の玄関まで入ってきてしまいました。
お湯番を任されたのは、なんと接客初体験の千尋。
そう、千尋にとっての初めてのお客様がオクサレ様だったのです。
先輩であるリンが一緒とはいえ、もし自分が同じ経験をしたらトラウマものですよね…
客として、お代をしっかり払うオクサレ様とそれを受け取る千尋。
(一体どこから小判を取り出したのでしょうか…)
体がガチガチに強ばりながらも千尋は案内役を全うし、オクサレ様は無事に薬湯に浸かることができました。
しかし薬湯を浴びても一向に綺麗にならない自分の体を、オクサレ様は「おかしいな」とばかりに見つめます。
この一連の行動で分かることがあります。
来店し、お金を渡してお風呂に入り、体を綺麗にする。
普通の神様であれば何の違和感もないことですが、この神様が本当にオクサレ様であれば、その存在自体が『汚れ』なハズです。
体を綺麗したいと思うものなのでしょうか?
つまりオクサレ様は自身のことを、穢れから生まれた『腐れ神』だとは思っていない様なのです。
ならば、このオクサレ様は一体何者なんでしょう。
偶然湯船に落ちた千尋はオクサレ様に誘導され、突き出るトゲのような存在に気付きます。
にわかに騒がしくなる湯屋
「湯屋一同、心を揃えて」
湯婆婆の掛け声とともに従業員たちは一斉にトゲに結んだロープを引きます。
トゲとは、古びた自転車のハンドルでした。
それを発端に、出てくるのはおびただしい数と量のゴミです。
それらはすべて、オクサレ様の中から引きずり出されたものでした。
そして千尋は、綺麗になったお湯の中でオクサレ様の姿を見ます。
そう、今回来店したオクサレ様は、本当の『腐れ神』ではなかったのです。
お湯を纏い湯屋から飛び去る姿は、紛れもない龍です。
その正体が、湯婆婆から明かされます。
「あれは名のある河の主だよ」
残念ながら名前が明かされることはありませんでしたが、同じく河の神様であるハクも龍の姿をしていることから、河の神様はみんな龍の姿をしているのかもしれませんね。
また、ハクよりも遥かに長い体長であることから、かなりの長さを誇る河の化身であることがわかります。
では、そんな立派な神様がなぜあのようなヘドロの姿になってしまったのでしょうか。
理由は、オクサレ様の中から溢れ出してきた無数のゴミが物語っています。
きっと本来は綺麗で雄大な河だったのでしょう。
しかしそこに人間が長年に渡りゴミを捨て汚染したことにより、ジワジワと河の神様そのものも蝕んでしまいました。
その結果が、湯婆婆ですらオクサレ様と間違うほどに穢れてしまった姿なのです。
オサクレ様の「よきかな」とはどんな意味なの?
元の姿に戻ったオクサレ様は、千尋にこう呟きます。
『よきかな』
よきかなとは、漢字ではこの様に書きます。
『善哉』
もともとは、褒め称える言葉・喜び祝う様を表す言葉です。
ではオクサレ様は、どういった意味でこの言葉を使ったのでしょうか。
そこには、2つの意味が含まれていると言われています。
元の姿に戻れた「よきかな」
体からゴミが引っ張り出されて最後のゴミがポンととれた時、オクサレ様はたまらず声を出します。
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
あれだけの量のゴミが体から排出されたらさぞかし気持ちが良いのでしょうね。
また、寒い冬の夜にあっつい湯船に浸かった瞬間みたいな声にも聞こえますよね笑
そのことから、「よきかな」とは『体がすっきりした』『いいお湯だった』という意味が含まれると考えられます。
千尋や授業員に対する「よきかな」
前述の通り、『善哉』とは「褒め称える」という意味を持ちます。
今回千尋は、とんでもないハードワークと精神的なダメージを受けながらも必死に働きました。
湯屋の従業員と共に力を尽くしたおかげでオクサレ様は本来の姿に戻ることができました。
つまり、千尋たちがいなければオクサレ様は本来の姿に戻ることはできなかったのです。
その行いに対する謝辞として、この言葉を使ったと言われています。
「ありがとう」と言わないあたりが何とも大物の神様らしいですよね笑
オサクレ様の声優は誰?
高らかな笑い声とともに湯屋を去るオクサレ様。
神様らしくとても威厳がありつつ、それでいて優しそうなおじいちゃんのような声ですよね。
そんなオクサレ様の声を担当されたのが、はやし・こばさん。
- 生年月日:1935年7月27日
- 出身県:東京都
- 職業:作曲家
オクサレ様はおじいちゃんの様なお面をしていましたが、声優さんもやはりご高齢の方だったんですね!
そんなはやし・こばさんですが、実は声優としての出演はこの『千と千尋の神隠し』だけなんです。
主に作曲家・俳優として活躍されていらっしゃったようです。
スタジオジブリの他作品でもキャラクターとして出演が望まれる声も多くあったようですが、叶うことなく、残念ながら2016年にお亡くなりになりました。
まとめ
今回はみんな大好きオクサレ様、その正体やセリフの意味についてまとめました!
登場シーン自体は少ないオクサレ様ですが、作中ではかなりのキーマンとして存在感を発揮しています。
千尋の成長の第一歩となり、お礼としてもらったニガダンゴのおかげでハクが助かるなど、オサクレ様の貢献度は大きいのです。
『千と千尋の神隠し』をステイホームのおともに、こたつでまったりしてみるのはいかがでしょうか!